連続印刷の概要とメリット
PDF の「連続印刷」機能は、複数ページを順に並べ、1枚の用紙に貼り付ける方式です。
- 印刷作業の高速化:大量のページをワンフローで処理でき、紙の切り替えを減らします。
- トータルコスト削減:紙詰まりや切り替えミスを防ぎ、トナーの消費を抑えます。
- 製造・試験環境での実用性:図面・計测資料やテストレポートをひとつの用紙にまとめる際に有効です。
本ガイドでは、Windows、macOS、Linux それぞれの環境で PDF を連続印刷するための簡単設定方法と、よくあるトラブルへの対処法を順を追って解説します。
1. Windows での連続印刷設定
1-1. PDF ビューアを決める
- Adobe Acrobat Reader DC:最も汎用的で連続印刷設定が充実しています。
- Foxit Reader:軽量かつ高速、連続印刷がスクリプトで制御可能です。
- SumatraPDF:シンプルで高速。連続印刷のオプションは少ないですが、
--pdfdrawコマンドで連続印刷を強制できます。
Adobe Acrobat Reader DC での手順
- PDF を開き、印刷ダイアログを開く(Ctrl+P)。
- ページ番号 を全選択。
- 「連続印刷」(
Tumble Print)チェックボックスをオン。 - 用紙サイズ、余白設定を確認し、必要に応じて調整。
- 「印刷」をクリック。
ヒント:頻繁に印刷する場合は、「設定」→「ページサイズ」 で「連続印刷」をデフォルトに設定しておくと便利です。
1-2. プリンタードライバーの設定
- ドライバーが連続印刷をサポートしているか:特にレーザー式や大型用紙プリンターで、
「Paper/Quality」タブの「Continuous Paper」オプションをオンにします。 - 用紙サイズ:PDF のページサイズに合わせて
Customを選び、正確に設定。 - 印刷向き:横 (Landscape) で印刷する場合は "横" 方向で設定。
1-3. コマンドラインで自動化
批次印刷が必要な場合は、PowerShell で次のようにコマンドを作成します。
$PdfPath = "C:\Docs\sample.pdf"
$PrinterName = "HP LaserJet 5000"
$PrintCmd = "AcroRd32.exe /N /T `"$PdfPath`" `"$PrinterName`""
Start-Process -FilePath $PrintCmd -ArgumentList "" -WindowStyle Hidden
注意:Adobe Reader のバージョンは 2023 以降で
/Tオプションが連続印刷を自動化できるようになっています。
2. macOS での連続印刷設定
2-1. Preview での設定
- PDF を開き、左側のサイドバーでページを並べます。
ファイル→印刷を選択。- 「用紙サイズ」 を「PDF で連続印刷」オプションに設定。
- 「ページ」 セクションで 「レイアウト」 を選び、「レイアウト」→「連続印刷」 をチェック。
Preview はデフォルトで連続印刷に対応していない場合があります。この際は Adobe Acrobat Reader DC を利用するか、PDF Expert などのサードパーティアプリを導入してください。
2-2. コマンドライン(CUPS)
lp -d HP_LaserJet_5000 -d PDF -o media=Custom.170x220mm -o page-ranges=1-8 -o cups-paper-source=0 -o cups-layout=continuous /Users/me/Documents/sample.pdf
-o cups-layout=continuousは連続印刷を指示。-o media=Custom.170x220mmで PDF の各ページサイズに合わせる必要があります。
TIP:
lpoptions -p <printer> -lで現在のデフォルトオプションを確認し、-o cups-layout=continuousを追加してください。
3. Linux(Ubuntu 22.04)での連続印刷設定
3-1. CUPS GUI で操作
- ブラウザで
http://localhost:631を開く。 管理→プリンタを管理で対象プリンターを選択。プリンタ属性編集→印刷制御で 「Paper Handling」 にcontinuousを設定。
3-2. コマンドライン
lp -d hp5000 -o media=Custom.170x220mm -o page-ranges=1-20 -o cups-layout=continuous /home/user/docs/sample.pdf
-o cups-layout=continuousは Gnome Shell の print dialog でも表示されるPrint Layoutのオプションに該当します。
4. 連続印刷が動作しない主な原因と対処法
| 原因 | 具体的症状 | 対処法 |
|---|---|---|
| プリンターが連続紙をサポートしていない | 連続印刷オプションが灰色で選択不可 | ドライバーをアップデート、または専用の連続紙を扱えるプリンターへ切替 |
| ページサイズ不一致 | ページがカットされる、余白が増える | PDF のページサイズを確認し、プリンタのカスタムサイズで設定 |
| フォント埋め込み不足 | 「フォントが見つからない」や文字欠損 | PDF ビューアの「ページを埋め込む」オプションを有効に、または pdftk でフォント埋め込み再生成 |
| PDF のセキュリティ設定 | 印刷時に警告が出る、印刷できない | qpdf --decrypt でドキュメントを無効化、または PDF を再生成 |
| プリントジョブがキュー停止 | ジョブがハング、またはプリンターが停止 | lpstat -p で状態確認、lpadmin -r でプリンタをリセット |
| ページ番号順が乱れる | 表紙と本体が逆になる | PDF を qpdf --pages . 1-z -- でページ順再配置 |
| PDF の破損や欠損 | ページが欠けて出力 | pdfinfo でページ数を確認し、pdfimages 等で画像を抽出して確認 |
| 印刷速度が遅い | ジョブが長時間待機 | -o printer-resolution=600dpi 等で解像度下げる、-o raw オプションでトラブルデータを省略 |
4-1. テストジョブで原因特定
- 小さいサンプル PDF を作成し、単純ページを連続印刷。
- 失敗した場合はプリンターの テストページ を印刷。
- PDF を 単一ページ 化(
pdfimages→pdftk)し、印刷。
5. 効率化のためのツールとスクリプト
| ツール | 概要 | 使い方 |
|---|---|---|
| Ghostscript | PDF の変換・縮小に強い | gs -dNOPAUSE -dBATCH -sDEVICE=pdfwrite -sOutputFile=output.pdf input.pdf |
| pdfjam | LaTeX ベースでページレイアウトを自由に | pdfjam --nup 2x1 input.pdf |
| qpdf | PDF の結合・回転・ページ削除 | qpdf in.pdf out.pdf --pages . 2-5 --rotate 90:2-5 |
| CUPS | Linux でプリンタ制御 | lp -d printer_name -o cups-layout=continuous file.pdf |
| AutoHotkey | Windows で UI を自動化 | Send ^p{Enter} で印刷ダイアログを開き、キー操作でオプションを設定 |
5-1. 一連のフローを自動化する Bash スクリプト例
#!/usr/bin/env bash
# 配列に印刷したい PDF ファイルを登録
files=(
"/home/user/docs/partA.pdf"
"/home/user/docs/partB.pdf"
"/home/user/docs/partC.pdf"
)
printer="hp5000"
for f in "${files[@]}"; do
echo "Printing $f..."
# PDF を 1 ページずつ連続印刷
lp -d "$printer" -o cups-layout=continuous -o media=Custom.170x220mm -o page-ranges=1-$(pdfinfo "$f" | awk '/Page count/ {print $3}') "$f"
sleep 2 # プリンタの負荷緩和
done
echo "All jobs submitted."
6. 連続印刷を行うためのベストプラクティス
-
プリンターと消耗品を定期的にチェック
- コインローラーやフィーダーの清掃。
- ストック紙の品質を確認。
-
PDF を事前に整形
- 必要なページのみを抽出、不要な余白をカット。
- フォントを埋め込み、画像の解像度を統一。
-
印刷ジョブをバッチで管理
- コマンドラインツールとスケジューラ (cron, Scheduled Tasks) を連携。
- エラー時に自動でログを書き込み、後で再試行できる仕組みを用意。
-
ドキュメントの保管
- 連続印刷ジョブの設定を *.conf ファイルとして管理。
- 各ジョブごとに印刷設定ファイルを保持し、過去の失敗ケースを追跡。
7. まとめ
- PDF の連続印刷は正しい設定とプリンターのサポートが鍵です。
- Windows なら Adobe Acrobat DC が最も手軽、macOS や Linux では CUPS / Preview を活用すると効果的。
- トラブルが発生したら「プリンター設定」「PDF のページサイズ・フォント」「セキュリティ設定」の3点を先に確認。
- さらに、スクリプトやバッチツールを使うことで、規模が大きい印刷業務を高速化し、人為ミスを低減できます。
今回のガイドを参考に、PDF 連続印刷をスムーズに実装し、業務効率を最大化してください。


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