PDFにマスキング(レタクション)するとは何か
PDF 内の機密情報や個人情報を「消去できる」ことを指します。
単に文字を消すのではなく、コピーやコピー&ペースト、検索で再びその情報が漏れないように、元の文字データを完全に取り除いたり、不可視化したりします。
個人情報保護、機密文書の共有、法的義務(GDPR / 個人番号法など)に対処するために必須の作業です。
以下では、初心者でも取り組みやすい 5 つの手順と、それぞれのコツ・注意点を解説します。
1. PDF マスキングの目的と注意点
| 目的 | マスキングの方法 |
|---|---|
| 個人情報(名前・住所・電話番号)を消す | テキストを削除+背景を白に塗りつぶす(レタクリシスト) |
| 機密情報(契約条項・金額・内部数字)を保護 | クリッピングパスで覆い隠し、コピー不可に設定 |
| ファイルサイズを削減 | 画像を圧縮したり、不要なメタデータを削除 |
| 法的遵守(GDPR, 日本個人情報保護法) | 完全なデータ消去(OCR で確認) |
コツ
- まずは「何を消すか」のリストを作る。
- マスキング後に「テキスト検索が通らないか」を必ず確認。
2. 必須ツールの選択
2‑1. 有料ソフト (Adobe Acrobat DC)
| 特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 直感的 UI | マスクツールがワン・クリックで開く | 価格が高い(年間サブスクリプション) |
| 多機能 | OCR, PDF/Word 変換, デジタル署名 | Windows/Mac で同じバージョンが必要 |
ステップ
- ツール > プライバシー > レタクション
- 画像またはテキストセルの上でドラッグし、“Text & Images” を選ぶ
- “Erase” を押して一括削除
2‑2. 無料/オープンソース (LibreOffice Draw, PDF-XChange Editor, Foxit Reader)
| ソフト | 主な機能 | 備考 |
|---|---|---|
| LibreOffice Draw | PDF を編集し、テキストを消去 | フォントが異なるとレイアウトが崩れる可能性 |
| PDF-XChange Editor | マスクツール (Redaction) | 無料版でレタクションは制限付き |
| Foxit Reader | 無料マスクツール | バージョンごとに機能有無が変わる |
共通手順
- PDF を開く
- “Edit PDF” / “Redaction” を選択
- マスクしたい領域をドラッグ → “Redact” を確定
- Save As で別名保存
注意点
無料版では「レタクション情報が削除されていない」状態で保存される場合がある。
出力前に「元のテキストが残っていないかチェック」すること。
2‑3. コマンドライン (Ghostscript, qpdf, Mutool)
| コマンド | 主な用途 | 例 |
|---|---|---|
gs -sDEVICE=pdfwrite |
PDF を変換・圧縮 | gs -sDEVICE=pdfwrite -dCompatibilityLevel=1.4 -o out.pdf in.pdf |
mutool clean |
メタデータ除去、暗号解除 | mutool clean out_clean.pdf in.pdf |
qpdf --linearize |
直読性向上 | qpdf --linearize out_linear.pdf in.pdf |
例: テキスト削除(mutool clean はサポートしているが、完全なレタクションは難しい)
mutool clean -c output.pdf input.pdf
コツ
コマンドは「レタクション」ではなく「圧縮・改行」のため、レタクションは GUI で行う。
スクリプトで複数ファイルを一括処理したい時に便利。
3. 実際にマスキングする手順(Adobe Acrobat DC を例に)
-
PDF を開く
- Acrobat で PDF を「開く」→ 編集モードに入る。
-
レタクションツールを選択
- 「ツール」>「保護と管理」>「レタクション」
- 画面左に「Redaction」アイコンが表示される。
-
マスクしたい領域を指定
- テキストがある部分にドラッグし、矩形を作成。
- 画像や図形 も同様にドラッグ。
-
レタクションオプション
Text & Images→ 「Erase」をクリック。- 「Remove text and graphics」チェックボックスをオンにし、
Apply。
-
確認と保存
Ctrl + Fで文字検索、消えているか確認。ファイル > 名前を付けて保存→ 別名で保存して元のファイルを残す。
コツ
- マスク範囲が重複していると、文字が完全に消えない場合がある。
Page Thumbnailsで全ページを一気に確認する習慣をつけるとミス防止になる。
4. 無料ツールでのレタクション手順(LibreOffice Draw を例)
-
LibreOffice Draw で PDF を開く
- 「ファイル」>「開く」> PDF を選択。
- 「ページの配置」ダイアログで「ページを自動的に変換」にチェック。
-
テキスト削除
- 右クリックで「削除」→ 文字セルを選択して
Deleteキー。 - 画像・図形も同様に選択 →
Delete。
- 右クリックで「削除」→ 文字セルを選択して
-
背景白で塗りつぶす
描画 > 色 > 背景色で白を選択。
-
PDF として再エクスポート
- 「ファイル」>「エクスポート(PDF)」
- 「ページ設定」で「最終ページの拡張」を解除。
注意
- LibreOffice は PDF のレイアウトを完全に再現できないことがある。
- マスクしたら必ず「印刷プレビュー」で確認し、元通りに戻れないことがないかチェック。
5. よくある問題と対策
| 問題 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 文字が残っている | コピペが可能 | レタクション後の 検索 で確認、View > Text で表示 |
| レイアウト崩れ | フォントの差異 | PDF → Word → PDF 変換でフォント埋め込みの有無をチェック |
| 画像ノイズ | 大きな画像を削除 | 画像を再圧縮、解像度を下げる |
| 法規制違反 | PDF に残っているメタデータ | qpdf --stream-data=none でストリームを除去 |
| マスクが不完全 | PDF の暗号化・変換が完了していない | 非表示(Non‑printing)属性を確認し、redact で再処理 |
6. よくある質問(FAQ)
Q1. マスクしたページだけを別ファイルにしたい場合は?
方法:Acrobat の「ツール」>「印刷準備」>「ページ範囲で抽出」→ その部分だけを PDF として保存。
LibreOffice では「ページの抽出」を選択。
Q2. PDF 内の画像だけをマスクしたい場合は?
方法:Acrobat では「レタクション」→「画像のマスク」にチェック。
LibreOffice Draw では画像を選択し Delete。
Q3. マスクした情報を後から取り戻せるか?
回答:基本的には 失われる(完全消去)。
元のファイルをバックアップしておくことが不可欠。
Q4. もっと高速に一括マスクしたい?
回答:
- Acrobat の Action Wizard(アクションを自動化)
mutool cleanでメタデータ削除+Acrobat でマスク- スクリプト化した Python + PyPDF2 でテキスト抽出・削除
7. まとめ
- 目的を明確にして対象情報をピックアップ
- ツール選択は使い慣れたソフトを優先。無料でも十分対応可能
- マスク手順はレタクションツールを使い、マスク範囲を正確に指定
- 確認は必ず検索やプリントプレビューで行う
- バックアップは必須。元の情報がいつでも復元できる環境を整える
PDF の機密情報を安全に処理するには 正しい手順と ツールの選択がカギです。
今回紹介した 5 つの段階を参考に、初心者の方でもスムーズにマスキング作業へ挑戦してください。


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