PDF圧縮の極意:サイズを1/5に削減する具体的テクニックとツール選び

PDFを作成した時点で、データ量が膨らむことはよくある悩みです。特に画像を多用したレポートや、スキャンした文書をまとめた資料では、単に数 MB になり、送信やアップロードに時間がかかります。この記事では、PDFサイズを 約 5 % ぐらいに抑えるための具体的なテクニックと、状況に応じたツール選びを徹底解説します。PDFを一度も圧縮したことがない方、または既に縮小策を試したが期待するほど軽くならなかったという方に、実践しやすい方法を紹介します。

PDF圧縮の基本原理

PDFは テキスト、フォント、画像、描画命令 など複数のストリームで構成されています。圧縮の鍵はこれらの要素をどこまで最適化できるかにあります。

要素 圧縮の手法 典型的な圧縮率
画像 再圧縮・解像度削減・フォーマット転換 70 % 〜 90 %
フォント 使用フォントのサブセット化 30 % 〜 70 %
テキスト・描画 無駄なメタデータ除去 10 % 〜 30 %
アニメーション・メディア 削除またはオフロード 10 % 〜 50 %

特に画像圧縮が最大の効果を発揮します。PDF内部では画像が JPEG, PNG, JPX などのフォーマットで格納されることが多いですが、目的に応じて適切に変換・再圧縮することが重要です。

1. 画像の解像度を見直す

画像解像度の最適化

  • 印刷用: 300 dpi がおすすめ。オンラインでは 72〜150 dpi で十分可読性が保てます。
  • スクリーン表示専用: 96 dpi でほぼ問題ありません。解像度を下げるとファイルサイズが大幅に減ります。

実践例
スキャンした章表紙だけなら 150 dpi、本文は「印刷品質」が必要なため 300 dpi と分けて保存します。画像編集ソフト (例: Adobe Photoshop, GIMP, IrfanView) で DPI を変更してから PDF に埋め込みます。

圧縮率の調整

画像を再圧縮する際には、品質パラメータ (JPEGで 80〜95、PNGで 1〜9) を適切に設定します。品質を多少落としても人眼では区別しにくいケースが多く、50 % ほど圧縮できます。

2. フォントのサブセット化

PDF には フォントが埋め込まれる ため、使用される文字だけを残すことで圧縮が可能です。多くの PDF 作成ソフトは「フォントのサブセット化」オプションを持っています。

  • Adobe Acrobat では「印刷品質」→「最終サイズ向上」→「フォントの埋め込みサブセット」をチェック
  • LibreOffice では「書類の印刷設定」から「フォントのサブセット化」を有効化
  • Microsoft Word で「ファイル」→「オプション」→「PDF/XPSの作成」→「フォントのサブセット化」を選択

サブセット化は特に多言語ドキュメントで効果が顕著です。日本語のように少数の文字セットで済む場合、フォントサイズを 30 % 〜 50 % 削減できます。

3. テキストとメタデータの最適化

メタデータの削除

PDF は標準で タイトル, 著者, キーワード, カスタムプロパティ を格納します。これらは多くの場合不要です。

  • Adobe Acrobat で「ファイル」→「プロパティ」→「説明」タブの不要項目を削除
  • Ghostscript-dPDFSETTINGS=/ebook オプションで自動的にメタデータを削除

ストリーム圧縮

  • Flate/ZIP でテキストストリームを圧縮
  • ASCII85 でASCIIベースの圧縮

Acrobat の「最終サイズ向上」オプションを選択すると、内部的に Flate 圧縮が適用されます。手動で Ghostscript を使う場合は次のようにします。

gs -sDEVICE=pdfwrite -dCompatibilityLevel=1.4 \
   -dPDFSETTINGS=/ebook \
   -dNOPAUSE -dQUIET -dBATCH \
   -sOutputFile=compressed.pdf original.pdf

4. 不要オブジェクトの除去

透明オブジェクトや注釈

  • 注釈 (アクション、コメント) は必要ない場合に削除すると 10 % 以上削減
  • フォーム フィールドも不要なら削除

Acrobat Standard・Pro には「PDFツール」→「ファイルの最適化」→「不要なオブジェクトを削除」の機能があります。

画像の重複除去

同じ画像が複数ページに使われている場合、「画像の重複検出」 オプションで重複を統合するとサイズが縮小します。

5. オプションツールの比較

ツール 主な用途 圧縮率 ライセンス 特徴
Adobe Acrobat Pro DC フル機能 70 % 〜 90 % 有料 インターフェイスが直感的
Ghostscript コマンドライン 80 % 〜 95 % 無料 複数プラットフォーム対応
pdftk 基本操作 60 % 〜 80 % 無料 スクリプト連携に最適
PDFsam Basic 分割/結合 60 % 〜 80 % 無料 軽量ツールセット
Smallpdf (Web) クラウド圧縮 70 % 〜 90 % 有料/無料枠 すぐに使える

選び方のポイント

  • 大量ファイル処理: Ghostscript
  • GUIで操作したい: Adobe Acrobat, Smallpdf
  • 既に PDF プロセスパイプラインを持つ場合: pdftk, PDFsam

6. 実践ワークフロー例

以下は日立の一般文書を例にした 5 % 圧縮までの手順です。

  1. 作成: MS Word → PDF(高画質)
  2. サブセット化: Acrobat → フォントのサブセット化
  3. 画像最適化: IrfanViewで解像度 150 dpi にリセット、JPEG 80% で保存
  4. メタデータ削除: Acrobat → プロパティ → すべて削除
  5. Ghostscriptで再圧縮: -dPDFSETTINGS=/ebook

コマンド例

# 画像は解像度と品質調整済み
gs -sDEVICE=pdfwrite -dCompatibilityLevel=1.4 \
   -dPDFSETTINGS=/ebook \
   -dNOPAUSE -dQUIET -dBATCH \
   -sOutputFile=final.pdf step4.pdf

効果確認

ステップ サイズ
初期 10 MB
1 9.4 MB
2 7.8 MB
3 6.2 MB
4 4.8 MB
5 3.1 MB

約 70 % 削減に成功しました。ターゲットの 1/5(20 %)に到達できるケースでは、画像解像度をさらに低下させるか、フォントやメタデータの削除レベルを上げる必要があります。

7. トラブルシューティング

兆候 原因 対策
テキストが欠落 フォントサブセットが不十分 フォントを再埋め込み
画像がぼやける 過度な圧縮 品質パラメータを 85 以上に設定
PDFが開けない 破損したオブジェクト Ghostscript の -dPDFACompatibilityPolicy=0 を使用
変換中にエラー サポート外の圧縮形式 元ファイルを PNG/JPEG に統一

8. まとめ:小さくするための四つの法則

  1. 「必要なものだけ」 – 画像・フォント・メタデータを厳選
  2. 「品質と量のバランス」 – 解像度・品質は可読性に合わせて最小化
  3. 「オフライン・オフライン」 – 画像の再圧縮はローカルで完結、クラウドは一時的に
  4. 「自動化で継続的に」 – Ghostscript でスクリプト化し、毎回同じ手順を繰り返す

これらを守れば、PDFサイズを約 5 % まで削減し、さらに必要に応じて 1/5(20 %) まで逼迫させることが可能です。作業フローを確立し、ツールを選択して実践してみてください。あなたの PDF が軽くなり、送信やアップロードも快適になるでしょう。

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