導入文
PDFは情報のやり取りやアーカイブに最適な形式ですが、フォントが正しく埋め込まれていないと、閲覧環境によって文字化けやレイアウト崩れが起きることがあります。特にデザイン関係者やエディター、印刷業者は「実際にどんなフォントが使われているのか」「埋め込むべきフォントはどれか」といった情報を知る必要があります。そこで今回は、PDFファイルのフォントを調べるための手順と、無料・有料の便利ツールを網羅した完全ガイドを提供します。
PDFに埋め込まれたフォントを確認する必要性
- レイアウトの安定性:埋め込まれたフォントが無いと、代替フォントに差し替わり、ページレイアウトが崩れる。
- 著作権とライセンス:フォントは著作権で保護されているものが多く、使用条件(埋め込み可否、商用可否など)を確認する必要があります。
- 印刷品質:フォントが欠けていると解像度や描画が悪くなる。
- 国際化対応:多言語PDFでは各言語のフォントを正しく埋め込むことで文字化けを防止。
1. PDFフォント情報を取得する基本ステップ
- PDFを開く
Adobe Acrobat Readerでも可能ですが、より詳細を得るにはAcrobat Proやその他閲覧ツールを利用する。 - 「プロパティ」ダイアログを開く
ファイル>プロパティ- または
Ctrl + D(Windows)/Command + D(Mac)
- 「フォント」タブを確認
ここに「使用されているフォント名」「TrueType/Type1」「埋め込み状態」などが一覧表示されます。
ヒント:Acrobat Readerでは「フォント」タブが非表示の場合があります。その場合はAcrobat Proを使用するか、別途ツールを利用してください。
2. Adobe Acrobat Proで詳細を引き出す
Acrobat ProはPDFの書き出し・編集だけでなく、内部構造の詳細情報を閲覧できる強力なツールです。
2‑1. フォント一覧の確認
ファイル>プロパティ>フォント- 「埋め込み」列で部分埋め込み(subset)や完全埋め込みを確認。
2‑2. フォントプロファイルのエクスポート
ファイル>その他>PDF/X-1a(またはPDF/X-3)で保存すると、フォント情報を含むXMPメタデータが生成されます。- 生成されたXMPファイルをXMLエディタで開くと、
<pdf:Font>要素にフォント名とライセンス情報が記載。
3. 無料で使えるフォント調査ツール
| ツール | 主な特徴 | 取得方法 | 使い方 |
|---|---|---|---|
pdffonts(Ghostscript) |
コマンドラインでフォント一覧を表示 | gs -q -dBATCH -dNOPAUSE -sDEVICE=pdfwrite -dPDFX -dEmbedAllFonts=true -sOutputFile= |
pdffonts file.pdf |
PDFinfo(xpdf) |
PDF情報全般を取得 | pdfinfo file.pdf |
pdfinfo -all file.pdf |
QPDF |
PDF構造を解析 | qpdf --show-fonts file.pdf |
qpdf --show-fonts file.pdf |
SumatraPDF |
シンプルビューア | ダウンロード | 右クリックメニュー > プロパティでフォント確認 |
Foxit Reader |
無料だがプロパティでフォント確認可 | ダウンロード | ファイル > プロパティ > フォント |
| オンラインサービス | PDF24 Tools, PDFfreetool.com など |
ブラウザでPDFアップロード | 「フォントを表示」ボタンをクリック |
3‑1. Ghostscript’s pdffonts を活用する
pdffonts は Ghostscript に入っているコマンドで、非常にシンプルにフォント情報をまとめてくれます。
pdffonts sample.pdf
結果は次のように表示されます。
name type encoding emb sub
--------------------------------------------------------
Helvetica TrueType glyphname true true
Helvetica-Bold TrueType glyphname true true
emb: 埋め込み有無(true/false)sub: サブセット化しているか(true/false)
3‑2. PDFinfoでメタ情報を取得
pdfinfo -f 1 -o full.txt sample.pdf
full.txt にはページ数、解像度、作成日時、フォント情報も含まれます。
4. コマンドラインでフォントを抽出する方法
時にはPDFから実際にフォントファイル(TTF/OTF)を取り出したい場合があります。以下はその手順です。
- QPDF でファイルディコーダに変換
qpdf --stream-data=uncompress sample.pdf intermediate.pdf - フォントストリームを抽出
- PDF内のフォントストリームは
/Type /Fontで始まります。 grep -n "/Type /Font" intermediate.pdf | cut -d: -f1で行番号を取得。
- PDF内のフォントストリームは
- PDFTron の Extract Font ツール
- 商用APIですが、無料ダミートライアルで実行。
PDFNet.extractFont("sample.pdf","output_dir")
注意:フォントを抽出して再利用する場合は必ずフォントライセンスを確認してください。
5. フォント情報が不明瞭な場合の対処法
- 埋め込まれたフォントが破損している:Acrobat Proで「フォントを再埋め込み」可能。
- サブセット化されたフォント:
pdffontsのsubがtrueであればサブセット。必要に応じて「完全埋め込み」に再変換。 - フォントがシステムにインストールされていない:
pdfinfoでCreatorフィールドに印刷情報が記載されていれば、使用されているフォントファミリー名が分かります。
6. フォントの種類と埋め込み方法
| フォント形式 | 埋め込み可否 | 推奨ポイント |
|---|---|---|
| TrueType (TTF) | ほとんど可 | -dEmbedAllFonts=true で完全埋め込み |
| OpenType (OTF) | ほとんど可 | TrueTypeと同様 |
| Type1 | 可能 | -dSubsetFonts=true でサブセット化 |
| CIDフォント | サポートあり | 大規模な文字セットで推奨 |
6‑1. PDF/X-1aで完全埋め込みを保証
Adobe Acrobat Pro で PDF/X-1a 形式に変換すると、すべてのフォントが埋め込まれます。
ファイル > 変換 > PDF/X > PDF/X‑1a: 2001 (PDF/LaTeX)
7. PDFフォント情報を管理するチェックリスト
| No | 項目 | 目的 | 取得方法 |
|---|---|---|---|
| 1 | フォント一覧 | 全フォントを把握 | Acrobat Pro > プロパティ > フォント |
| 2 | 埋め込み状態 | 完全埋め込みか | Acrobat Pro / pdffonts |
| 3 | サブセット化 | 部分埋め込みか | pdffonts sub 列 |
| 4 | ライセンス情報 | 商用利用可否を確認 | XMPメタデータ / 公式サイト |
| 5 | フォント形式 | TrueTypeか Type1 か | pdffonts type 列 |
| 6 | フォントファミリー名 | デザイン統一チェック | pdfinfo -f 出力 |
| 7 | 日本語フォント | CJK フォントが正しく埋め込まれているか | Acrobat Pro > フォント |
8. よくある質問(FAQ)
Q1. PDF内にフォントが表示されない場合、どうすればいい?
A:フォントが埋め込まれていないか、サブセット化されていて文字コードが一致していない可能性があります。まずは Acrobat Pro で「PDF/X-1a」に再変換し、pdffonts で完全埋め込みを確認してください。
Q2. 無料ツールで最も簡単にフォント情報を取得できるのは?
A:pdffonts が最も手軽で、複数フォントを一括でリスト取得できます。Windows では Ghostscript をインストールすればコマンドラインから使用可能です。
Q3. フォントを抽出して別のデザインソフトで使う場合、許可が必要ですか?
A:フォントは著作物です。抽出したファイルを第三者に配布・商用利用する場合は、フォントのライセンス(EMB か、フォント埋め込みが許可されているか)を確認し、必要に応じてライセンス契約を取り付ける必要があります。
Q4. PDF内の日本語フォントがひらがなだけ埋め込まれている場合、何か対策は?
A:CJKフォントはサブセット化されがちです。Acrobat Pro の「編集」>「文字」>「フォント」から「すべて埋め込む」を選択し、再PDF化してください。
9. まとめ
PDFのフォントを調べることは、印刷の品質保証はもちろん、法的リスクの回避やデザイン統一の観点からも欠かせません。今回ご紹介した手順やツールは、どちらも初心者でも簡単に扱えるものばかりです。まずは Adobe Acrobat Pro で「フォント」タブを覗いてみてください。もし手元に Pro が無ければ、無料ツールの pdffonts やオンラインサービスでまずは概要をつかみ、必要に応じて埋め込み状態を改善・確認しましょう。
PDFが正しく「文字」情報を持つように管理することで、受け取る側だけでなく作成側の安心感を大きく高めることができます。今すぐチェックして、フォントの不具合を解消してみてください。


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